波の基本性質
波はエネルギーが伝わる現象で、物質は動かない。縦波・横波から干渉まで、波動現象の全体像をつかむ。
波を見たことがある、でも「波とは何か」は難しい
海の波を見て「あ、波が来た」と言うとき、何が来たのか。水が海岸まで移動してきたのだろうか?
違う。水は上下に動いているだけで、岸に向かって移動していない。
サーファーを想像してほしい。波が来ると、サーファーは上がったり下がったりする。でも、波がなければサーファーはほぼ同じ場所に浮かんでいる。水が来るのではなく、「揺れの状態」が伝わってくるのだ。
これが波の本質:物質は移動せず、エネルギーだけが伝わる現象。
地震では2種類の波が地面を伝わる。
P波(Primary wave):縦波。固体・液体・気体を伝わる。速い(約6 km/s)。「ドン」という縦揺れ。
S波(Secondary wave):横波。固体だけを伝わる。遅い(約3.5 km/s)。「グラグラ」という横揺れ。
緊急地震速報はこのP波とS波の到達時間差を利用している。P波を検知してから、破壊的なS波が到達するまでの数秒〜数十秒を警告時間として使うのだ。
縦波と横波の違い
| 種類 | 振動方向 | 伝わる媒質 | 例 |
|---|---|---|---|
| 横波 | 進行方向と垂直 | 固体(電磁波は媒質不要) | 光・電磁波・地震S波 |
| 縦波(疎密波) | 進行方向と平行 | 固体・液体・気体 | 音波・地震P波 |
音は縦波なので真空中を伝わらない。
光は電磁波(横波)なので真空でも伝わる。映画『エイリアン』のキャッチコピー「宇宙では悲鳴は聞こえない」は物理的に正確だ。
波の3つの基本量
| 量 | 記号 | 単位 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 波長 | λ | m | 1回の振動が作る波の長さ |
| 振動数 | f | Hz | 1秒間の振動回数 |
| 周期 | T | s | 1回振動するのにかかる時間 |
| 波速 | v | m/s | 波の進む速さ |
v = fλ の直感的な理解:
1秒間にf回振動して、1回の振動でλmの波が作られる。だから1秒間でfλm進む = 波速 v。
問1 振動数 440 Hz(ラの音)の音波。音速 340 m/s として波長は?
問2 波長 600 nm(nm = 10⁻⁹ m)の赤い光。光速 3.0 × 10⁸ m/s として振動数は?
重ね合わせの原理
2つの波が同じ場所を通るとき、変位を足し算するだけ。
山と山が重なる → 振幅が2倍(強め合い・干渉)
山と谷が重なる → 振幅がゼロ(弱め合い・打ち消し)
これが重ね合わせの原理。波の最も重要な性質の1つだ。
波が重なっても、通り過ぎた後はそれぞれ元の形に戻る(独立性)。
定常波(定在波)
同じ振幅・波長の2つの波が逆向きに進むと、動かない波が生まれる。
節(node):常に動かない点
腹(antinode):最も大きく振動する点
隣り合う節と節の間隔 = λ/2
弦楽器の「美しい音」は定常波によるものだ。ギターの弦を弾くと、特定の波長だけが定常波として残り、他は打ち消される。その波長が楽器の音程を決める。
ノイズキャンセリングイヤホンは「音波の打ち消し」を利用している。
外からのノイズを内蔵マイクで拾い、その波形と正確に逆位相の音波を即座に生成してスピーカーから出す。元の音波と逆位相の音波が重なると、干渉によって打ち消され、耳にはほぼ無音に聞こえる。
「音を音で消す」という逆転の発想だ。
波の基本まとめ
- 波 = エネルギーの伝搬(物質は移動しない)
- 横波(光)vs 縦波(音):振動方向の違い
- 基本式:v = fλ、T = 1/f
- 重ね合わせ:変位を足し算するだけ
- 定常波:逆向きの同じ波が重なると発生
v = fλ は「波長が長いほど振動数が低い(= 低い音・赤い光)」という関係も示している。
// quiz
確認問題
Q1.波速 v、振動数 f、波長 λ の関係は?
Q2.音波はどんな波か?