固体物理・バンド理論
なぜ金属は電気を通し、半導体はスイッチになり、絶縁体は通さないのか。結晶中の電子のエネルギーバンドで説明する。
「なぜ銅は電気を通してプラスチックは通さないのか」
この問いに量子力学が答える。
原子が規則正しく並んだ結晶中では、電子のエネルギーは連続でなくバンドを形成する。
フェリックス・ブロッホが周期的ポテンシャル中の電子を量子力学で解析し、バンド理論の基礎を確立。現代半導体産業の理論的基盤となった。
バンドの形成
孤立原子では電子はとびとびのエネルギー準位を持つ。
N個の原子が集まると、各準位が**N個に分裂して「バンド」**を形成する(N ≈ 10²³)。
バンドとバンドの間には電子が存在できない**禁制帯(バンドギャップ)**がある。
3つの物質タイプ
金属:伝導帯が部分的に満たされている(フェルミ準位が伝導帯内)。電場をかければすぐ電子が動く。
半導体:小さいバンドギャップ(Si: 1.1 eV)。室温の熱エネルギー(~0.025 eV)の一部が伝導帯に届く。
絶縁体:大きいバンドギャップ(ダイヤモンド: 5.5 eV)。室温では伝導帯に電子が届かない。
フェルミ・ディラック分布
絶対零度ではエネルギーがフェルミ準位 以下の状態がすべて満たされる。
有限温度では:
電子がエネルギー E の状態を占有する確率。
電子はスピン1/2のフェルミオン。同一の量子状態を2個以上の電子が占有できない(パウリの排他原理)。これがボーズ統計と異なる点。
半導体とドーピング
n型:5価原子(P, As)を添加 → 余分な電子が伝導帯に入る
p型:3価原子(B, Al)を添加 → 正孔(ホール)が価電子帯に生まれる
pn接合で整流作用(ダイオード)が生まれ、トランジスタ・集積回路が実現する。
光子がpn接合に当たると電子-正孔対が生成。内蔵電界で分離されて電流が流れる。バンドギャップに合った波長の光を効率よく吸収できるシリコンが主材料として使われる理由。
スマートフォンのCPUには1nm以下のトランジスタが数百億個集積されている。すべてバンド理論と量子力学に基づいて設計・製造されている。
// quiz
確認問題
Q1.バンドギャップが大きい物質はどれか?
Q2.シリコン(Si)のバンドギャップは約何eVか?