トポロジカル物理
形を変えても変わらない「位相不変量」が物性を決める。トポロジカル絶縁体・量子ホール効果・ベリー位相——現代物性物理学の革命。
ドーナツとコーヒーカップは「同じ」
数学のトポロジー(位相幾何学)では、連続変形で移り合える図形を同じとみなす。
**穴の数(属数)**が等しければ同じクラス。ドーナツ(穴1個)≡ コーヒーカップ(取っ手の穴1個)。
この「位相不変量」の考え方が、物性物理学に革命をもたらした。
デービッド・サウレスがホール伝導率の量子化をChern数(トポロジカル不変量)で説明(1982年)。コーストリッツ・サウレスが2次元超流動でトポロジカル相転移を発見。ハルデインが1次元スピン鎖のトポロジカル相を予言。
ベリー位相
パラメータが閉じたループを描くとき、量子状態は動的位相以外に**幾何学的位相(ベリー位相)**を獲得する:
ベリー曲率:
整数量子ホール効果
2次元電子系に強磁場をかけると、ホール伝導率が普遍的な値に量子化:
整数 はチャーン数(ベリー曲率の全空間積分)で、これがトポロジカル不変量。
バンドギャップが開いている限り、不純物・変形に対してロバスト——精度 以上の電気抵抗標準として使われる。
トポロジカル絶縁体
バルク(内部):エネルギーギャップが開いた絶縁体だが、トポロジカル不変量(Z₂不変量)が非自明
→ 表面(エッジ)に必ずギャップレスの伝導状態が現れる
表面状態はスピン・運動量が固定(スピン運動量ロッキング)→ バックスキャタリングなし
Bi₂Se₃・Bi₂Te₃などが実験的に確認されたトポロジカル絶縁体。
3次元でバンドが1点で交差(ワイル点)する物質。電子の「磁気単極子」として振る舞い、フェルミアーク表面状態を持つ。TaAs・NbAsが実例。
マヨラナ準粒子(トポロジカル超伝導体の端状態)は量子コンピュータのエラー耐性量子ビットの候補。トポロジカル絶縁体の表面電流はスピントロニクスデバイス(不揮発性メモリ・スピンFET)に応用検討中。
// quiz
確認問題
Q1.トポロジー的な意味でドーナツとコーヒーカップが同じと言われる理由は?
Q2.整数量子ホール効果でホール伝導率が σxy = ne²/h になる理由に関係する量は?